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アリソン・アトリーの生涯 (8/2)

 アリソン・アトリーと言えば、『時の旅人』という一度はぜひ味わいたい極上のファンタジー有名ですが、「グレー・ラビット」「ルーファス」「チム・ラビット」のシリーズなどの幼い子どもたちの心を捉えて離さないお話もたくさん書いたイギリスの女性作家です。

この度、『アリソン・アトリーの生涯』という本の出版を記念して、JURA出版局からミニ展示会をしてみないかという話があり、イベント嫌いの私もつい心を動かされました。というのも、ずっと以前から、彼女の作品の魅力に取り付かれていたからです。  

展示会をするにあたって、気になりながら読みきっていなかった、『農場に暮らして』(岩波少年文庫)と九十九歳の石井桃子さんが虫眼鏡を使ってでも読むとおっしゃったという、分厚い二段組みの『アリソン・アトリーの生涯』を1週間ほどかけて読み上げました。

『農場に暮らして』は、これまで読んできたファンタジーとは違って、自伝的小説なのですが、この作品を読んではじめて、その後のファンタジーがどうして生まれたかがよくわかりました。生まれ育ったイギリスのダービシャーの田舎での生活と彼女の類まれなる感性が、ぴったりと融合して生まれたのが、その後のファンタジーの作品群だったのでしょう。

一方『アリソン・アトリーの生涯』を読むことで、その優れた感性と一緒に、弱点も併せ持ったアトリーが、渾身の努力にもかかわらず、多くのことを犠牲にせざるを得なかったことを知りました。一見何の苦もなく書かれたように見える作品の奥深さのわけが、実は、ここにあったのかもしれません。

この展示会をきっかけに彼女の作品をじっくり読むことができたということは、私にとって、とても幸せでした。

そして、没後30年たっても、まったく古くならない、素晴らしいこれらの作品を、ぜひ多くの方たちに読んで欲しいとつくづく思ったものです。


物語の紡ぎ手 アリソン・アトリーの生涯
デニス・ジャッド著 中野節子・訳 JULA出版局 ¥3990