尽きない好奇心 温かく描く  あくたれラルフ

あくたれラルフ

ジャック・ガントス/文
ニコール・ルーベル/絵
いしいももこ/訳
童話館出版 ¥1500
ISBN4-924938-26-2
絵本=読んであげるなら
4・5才くらいから

 近所に手のつけられないわんぱく坊主がいて、悩まされたことがあります。店の中を走り回るわ、本は取って投げるわ、あげくの果てに我が家の大事な子猫をバケツの水で泳がせるわ・・・。
■ 初めて「絵本がほしい」 ■
 なんとかならないものかと考えたあげく、絵本を読んであげることにしました。けれども、おとなしく聞いているのは一緒に来たお姉ちゃんだけ。なかばやけくそで「あくたれラルフ」を読み始めると、その途端、いたずらの手がしばし休まりました。

 その夜、お詫びにおいでになったお母さんが「それはそうと、うちの子が生まれて初めて絵本がほしいといいました」とおっしゃって、「あくたれラルフ」をお持ち帰りいただきました。そのあとしばらくして、「毎晩ラルフとのつきあいでもうくたくたです」と嬉しいご報告を受けたことがあります。

 その後もいろいろな方から、同じようなお話を伺って、あらためて見直した絵本です。
■ わんぱく坊主も共感 ■
 あくたれネコのラルフは、クッキーをひと口ずつかじって味見をしたり、お父さんの大事なパイプでしゃぼんだまをふいてみたり、飼い主のセイラをいつも困らせます。ある日、家族とサーカスに行ったラルフは、そこでもさんざん悪いことをして、置いてきぼりを食い、ひどい目にあったあげく、やっとのことでセイラのところへ帰ってくるというお話です。

 一見、しつけにうるさいお母さんが眉をひそめそうな絵本ですが、「あくたれでも、セイラは、とてもラルフが好きでした」という出だしと、「もう二度とあくたれはしまい」と思ったのに、「お母さんがエビのご馳走をしたときだけは、どうしても我慢できませんでした」という終わりに、子どもたちは、作者の子どもを見る目の温かさをちゃんと感じとるようです。

 冒頭のわんぱく坊主も、ラルフに共感するところがあったのでしょう。お母さんの話をきいて、「あくたれ坊主め、さぞやラルフの気持ちがわかったのだろう」と思わず笑いがこみあげてきたことを思い出します。
■ 成長につきものの失敗 ■
 時に幼い子どもは、大人にとって信じられないことをしでかします。けれども見るもの聞くものがめずらしい、好奇心旺盛な幼い子どもは、ただ、やってみたいことをしているだけなのです。あくたれ坊主もラルフも、きっとそうだったのでしょう。当然、失敗も繰り返すわけですが、そのおかげで、成長すると言っても過言ではないような気がします。どれだけ失敗しても尽きない好奇心。そんな子どもの心理を、この「あくたれラルフ」は見事にとらえています。

 申し上げておきますが、あくたれを直すのに即効性は保証しません。主人公にわが身を重ねて満足することで、失敗にもめげず生きる力をつけてくれることを信じたいと思います。