ハーモニカのめいじんレンティ
 「芸は身を助く」などといったら、ありきたりに聞こえますが、この「レンティル」はまさにそ
んなお話です。歌うことも下手で口笛も吹けないレンティルが、一念発起して始めたハーモニカで、カーター大佐を迎える楽団のかわりをみごとやってのけます。

 この作品は「かもさんおとおり」や「サリーのこけももつみ」、「海べのあさ」のモノクロの絵本や、「すばらしいとき」(品切れ)、「沖釣り漁師のバート・ダウじいさん」などの見事なカラーの絵本で知られるロバート・マックロスキーの、自伝的デビュー作といわれています。

 レンティルがハーモニカに出会ったように、マックロスキーが絵本を描くことの面白さに出会うきっかけとなった作品かもしれません。

●二男の初仕事●
 実はこの作品、わが家の次男の初仕事でもあります。営業社員として出版社に入って3年目にようやく、編集の仕事を任されました。日頃あたためていたこの「レンティル」を出版したいという希望は、そう簡単には受け入れられなかったようです。

 一念発起の情熱は、息子の場合、「竹とんぼの店頭で自信をもって売れる本を作りたい」、という一心から生まれたものだと言ってくれました。嬉しくもあり、厳しくもある一言でした。まあ、せめて、この本を売ってあげようと思っているところです。

●頭が下がる 間崎さんの仕事●
 一方、編集のイロハもわからないド素人の息子の仕事を、こころよく引き受けてくださった間崎ルリ子さんに深く感謝いたします。この「レンティル」は自宅を開放してやっていらっしゃる「鴨の子文庫」で、何度も子どもたちに読んであげて、翻訳を練り上げられたと聞きました。おまけに、レンティルが吹いたハーモニカの曲まで調べていただいて、巻末に、その楽譜と簡単な解説もいただきました。

 子どもの本には解説は要らないという声もありますが、いいかげんに訳出されている本の多い昨今、このような間崎ルリ子さんのお仕事には頭が下がります。

●死を前にして後悔しないものを●
 先日、息子は勤めていた出版社に辞表を出しました。この際もう一度、一念発起して語学の力をつけたいと、しばらく外国に行くと決心したようです。口も金も出さない
(出せない?)のがモットーの親としては「いってらっしゃい」というほかありません。

 父の代りに校正をした、「戦争と平和」(トルストイ)の中で、アンドレイが戦争で死ぬ直前、生きている間、自分は何をしてきたのだろう、という後悔と、元気な間は大変重要だと思われたことが、死を目前にすると、ほんとに取るに足りないものだということに気づく場面があります。語学の勉強も大事ですが、そこで何か確かなものをつかんできて欲しいと思います。
(執筆 小宮楠緒 2000年9月)
ハーモニカのめいじんレンティル

ロバート・マックロスキー 作
まさき るりこ 訳
国土社 ¥
1680
ISBN4-337-06237-8

絵本=読んであげるなら5歳くらいから