心を解き放つファンタジー かいじゅうたちのいるところ
かいじゅうたちのいるところ

モーリス・センダック/作
神宮輝夫/訳
冨山房 ¥1400
絵本=読んであげるなら
3才くらいから
 子どもたちは夢中になるけれども、大人の感性ではどうもわからない、という絵本があります。モーリス・センダックの「かいじゅうたちのいるところ」がその代表的なものです。
■ 今では店の指定席 ■
 私がこの絵本に出会ったのは今から19年ほど前でした。何ともインパクトのある作品をどう解釈したらいいのかわからず、棚の隅に放り込んだのを覚えています。
 
 その後、「子ども文庫の会」の山本まつよさんのセミナーで、あらためてこの絵本を見直しました。今では「まよなかのだいどころ」とともに、私どもの店の指定席に納まっています。

 ある晩、おおかみのぬいぐるみを着て大暴れするマックスは、とうとう夕ごはん抜きで、寝室に放り込まれてしまいます。すると、寝室に、にょきりにょきりと木が生え出して、あたりはすっかり森や野原。そのうち波が舟を運んできて、一年と一日航海するとかいじゅうたちのいるところ。そこでマックスはかいじゅうたちの王さまになり、思う存分暴れたあと、やがてもとの寝室に帰ってくると、そこにはちゃんと夕ごはんが置いてあって、まだほかほかとあたたかかった、というお話です。
■ 本でうっぷんを晴らす? ■
 子どもだって、どうにも納まりのつかないイライラはあるはずです。有無を言わさず寝室に放り込まれたマックスは、その憤まんやるかたない気持ちを自分でなだめなければなりません。そこで、かいじゅうたちのいるところ、つまりは空想の世界へ入っていくわけです。

 日頃、マックスと同じ思いをしている子どもたちは、すんなりとその世界に入っていけるのでしょう。そしてうっぷんを晴らし、一年と一日以上の充実した時を過ごすらしいのです。けれども頭のかたくなった、大人はそうはいきません。「どうしていきなり寝室に木が生えるの?」とか、「なんで一年と一日航海するんだ?」などと思ってしまうのです。

 同じ、センダックの「まよなかのだいどころ」も一見、荒唐無稽に思え、理屈で考えようとする私の頭をしばし悩ませました。
■ 子どもの心理をとらえる ■
 主人公のミッキーは、パンの練り粉やミルクのなかに飛び込んだり、子どもたちが日頃やってみたいことをすっかりやってくれます。その結果、困っているパン屋さんの役に立てたというこのお話は、大人の役に立つことが大好きな子どもたちの心を満足させます。でも子どもたちには理屈ぬきで楽しめるようで、「かいじゅうたちのいるところ」よりむしろ、こちらの方が好きだというお子さんも少なくありません。好き勝手に見える主人公の行動が単なる思いつきなどではなく、実は子どもの心理をうんと深いところでとらえているからのようです。

日頃、「ダメ、ダメ」と繰り返している親の罪滅ぼしとして、これらの絵本を読んであげることで、子どもたちが思いっきり自由になれるひとときをともにしていただきたいものです。
執筆 小宮楠緒