子どもに認めてもらう大切さ かしこいビル

かしこいビル

ウィリアム・ニコルソン/作
松岡享子/訳
ペンギン社 ¥1000
ISBN4-89274-021-7
絵本=読んであげるなら
2・3才くらいから
 店頭で、「何歳ですけど、どんな本がいいでしょうか?」という質問を受けるたびに必ず、「う〜ん」とうなってしまいます。一人一人違った子どもさんの好みにピッタリのものを選ぶことなど、本当はとてもできるわけないと思うからです。

 けれども、そうは言っていられないのが私たちの仕事です。「今、どんな絵本を楽しんでいらっしゃいますか?」などと、さぐりをいれつつ、お子さんのようすを見ながら、これはという本を数冊選ぶのですが、それでも、うしろめたさが残るのです。

その場にお子さんがいらっしゃるときは、それらの本を読んであげてもらい、お子さんが気に入った本をおすすめしています。

■ 伝家の宝刀も・・・ ■
 先日、3歳くらいの男の子が両親と一緒にやってきました。おすすめした「ガンピーさんとふなあそび」を親御さんが読んであげたのですが、いまひとつという感じです。

 何とか本を楽しめるようにしたいというご両親の熱意に、つい私も張り切って、「三びきのやぎのがらがらどん」「かいじゅうたちのいるところ」「ちいさなヒッポ」の3冊を読んであげました。

 けれども、イスによじ登ったり降りたり、そっくりかえったり。伝家の宝刀ともいうべきこれらの絵本でも刃が立ちません。

 あきらめて「もうしばらくしてからの方が良いでしょう。」と申し上げてから、「待てよ!!」と、最後に読んであげたのが、この「かしこいビル」でした。この本をおすすめして何度も喜ばれたことを思い出したのです。

■ ほめられる喜び ■
 ある日、メリーに郵便が届きます。「メリーちゃんあそびにいらっしゃい、いくつおとまりしてもいいですよ」というおばさんからの招待状でした。そこで、メリーはお父さんからもらったカバンをだして、持っていくものをつめます。

 スーザンというお人形や、笛や、てぶくろや、ティーポットにブラシにおさいふ、色々なものを詰めてみるのですが、なかなかおもうようにつめられません。

 しまいには時間がなくなって、めちゃくちゃに押しこんで蓋をしてしまいます。そうしたら、「なんと!! なんと!!!」 ビルという人形を忘れたまま、出かけてしまうのです。かわいそうに!

 けれども涙にくれていたビルは突然立ち上がると走って走って、全速力で走って、とうとうドーバー駅でメリーに追いつきます。そこでメリーに「かしこいビル!」とほめられるお話です。

 読み終えた途端、その男の子が「これおもしろい!これ買う!」。

 けんめいにやって、認めてもらう、まさに、メリーにほめられたビルのような気持ちでした。こんなとき、つくづくこの仕事していてよかったと思うのです。
執筆 小宮楠緒