本屋の驚き クマのプーさん
 昨年、ある若いお母さんが、私どもの店においでになって棚を見るなり「あっ、マドレーヌの絵本がある!マドレーヌって絵本もあったんですね。私この人形もってます。」「えっ、このひとまねこざるは所ジョージが声優をやっているから、じょーじっていうんですか?」、「あっ、クラシックプーだ!クラシックプーって本もあったんですね?私クラシックプーの絵が大好きで、手帳買ったんですよ。」とたて続けに興奮して叫ばれました。

クラシックプー?
 ルドウィッヒ・ベーメルマンスの「げんきなマドレーヌ」や「マドレーヌといぬ」は27年前から読みつがれているとても素敵な絵本で、開店当時売れ行きが思わしくないというのであわやというところを、助命嘆願の署名運動をしていまだに出していただいている本です。

 ひとまねこざるのじょーじ君は小型版のころを含むと43年も子どもたちを夢中にさせてきた絵本で、ビデオの声優をやっていらっしゃるかもしれませんが、所ジョージさんとはなんの関係もございません。

 なにより一番ショックだったのは「クラシックプー」!。石井桃子さんの訳で出版されて以来多くの子どもたちを楽しませてきました。このプーさんは、何年たっても本物が古くならないという見本のような作品で、どうぞクラシックプーと言う呼び名で過去の遺物としないでください。

「なぜプーさんではいけないの?」
 そう言えば長男が中学生の頃、クマのプーさんの読書感想文を書いて、担任の先生を含むクラスのみんなに笑われるという出来事がありました。プーさんが大好きで、中でもイーヨーとのやり取りに笑い転げていた長男は、「なぜプーさんではいけないの?」と当時、かなり悩んだと言います。

 今にして思えば、プーさんはディズニーが書いたものだと思われていて、A・A・ミルン作、J・シェパード挿絵の本物のプーさんが、ほとんど知られていなかったわけです。

本家本元は本でございます
 本物よりも、偽物が巾を利かすと言うことは、子どもの本に限らずよくあることです。本物偽物の定義や良し悪しなどを云々する気はありません。偽物の宝石だって本人が承知の上で身に付けているのであればちっともかまいません。けれども、クマのプーさんをディズニーの作品だと思いこまれたら困ります。

 プーさんだけでなく、優れた本がビデオになり、人形になり、ノートになって本家本元の存在が忘れ去られていく。本屋としてだけでなく、一人の親としてどうしても我慢できないのです。

 1962年、今の形で出版された「クマのプーさん・プー横丁にたった家」の他に、プーさんえほん(全15)、クマのプーさん全集(全1)があります。論より証拠、読み比べてごらんになると、その違いは火をみるよりも明らかです。どうぞこの機会におっちょこちょいで、心やさしいプーさんにぜひ出会ってください。読んでおあげになると就学年前から楽しめます。

本当の楽しさをお子さんと分かちあって下さい。 
(執筆 小宮楠緒 1999年5月)