「生きる」ことの意味を感じとる ナルニア国ものがたり
ナルニア国ものがたり(全7巻)
C・S・ルイス/作
瀬田貞二/訳
岩波書店 セット¥12000
各¥1650〜¥1800
ISBN4-00-200731-6(セット)
読物
小学校高学年から
 若い頃、「おまえたちも、これからいろいろと苦労をするだろうな。かわいそうだと思うけれど、親をうらまないでくれ」と父親に言われたことがあります。
■ 自分で解決する苦しみ ■
 その時は「無責任なことを言う親父だ」と言う程度にしか思わなかったのですが、五十歳代も半ばになって、「ああ、こういうことだったのか」と思い当たることがあります。どんなに苦しくても自分のことは自分で解決しなければならないし、たとえ、我が子が苦しみのどん底にあっても、その子の苦しみを親の私が背負ってやることはできません。

 C・S・ルイスの「ナルニア国ものがたり」は4人のきょうだいが冬の女王の支配するナルニア国に入り込んで春を勝ち取る壮大なファンタジーです。読み終えたとき、まるでジクソーパズルのすきまが埋められていくように、きちんとつじつまの合う、無駄も隙間もない物語の構成にまず驚きます。

 その底に流れているメッセージは、生きていく上でいろいろあるけれども、諦めずに、その時その時で何が大切か、今何をすべきかを考えて生きていけば、必ず道は開けるということです。
■ 「弱さ」を温かい目で ■
 第1巻目の「ライオンと魔女」では、ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシィーという4人のきょうだいが登場します。その中で、まっすぐ正しいと思う方に突き進む末っ子のルーシィーと、魔女にそそのかされて楽な方へとそれていく二男のエドマンドの生き方が印象的です。

 結局、エドマンドはもとに戻るために人一倍苦労しなければなりません。私などもぐずぐずと悩む方で、その時々でものごとをスパッとと決めて突き進むルーシィにあこがれるのですが、どうやらエドマンドと同じような道を歩いているのかもしれません。

 ここでホッとするのは、作者のC・S・ルイスは、エドマンドを決してダメな人間として描いていないことです。人間だれでもが持つ「弱さ」を持ったエドマンドが、その苦しみに打ち勝った後の成長ぶりを、ちゃんと温かい目で描いているのです。

 これを読む子どもたちは、息もつかせぬ話の展開に夢中になりながら、心のどこかで「生きる」ことの意味を感じをっていくことでしょう。
■ 神の存在を実感 ■
 わが家の二男がこの本を読んで「もっと早く読んでおけばよかった。こんな形で神というものを感じ取った子どもはいいよね〜。」としみじみ言ったことがあります。神という言葉にはどこか、軽々しく口に出せないところがありますが、その存在をアスランと言うライオンに象徴させたこの物語は、大人のいう観念的な、困ったときの頼みの神ではなく、実感としての神の存在を信じさせてくれるような気がします。

 三年前、IBBYの世界大会で皇后が講演された講演録の中で、自分のお子さんとこの「ナルニア国ものがたり」を楽しまれたことを知って、一母親として親しみを感じるとともに、どんな気持ちでこの本を読まれたのだろうと、ある感慨をおぼえました。
執筆 小宮楠緒