待ちに待った「海べのあさ」
海ベのあさ

マックロスキー/作
石井桃子/訳
岩波書店 ¥1700
ISBN4-00110579-9

絵本

読んであげるなら
5・6才くらいから
 ある朝、目がさめると、サリーの口の中で歯が1本ぐらぐらしています。たいへんだ!と、サリーはおかあさんのところへとんでいくのですが、おかあさんは、すこしもあわてません。「それは、サリーが大きくなった証拠で、その歯が抜けたら、新しい大人の歯が生えてくるし、抜けた歯をまくらの下に入れて願いごとをしたらかなうのです」と、うれしいことをおしえてくれました。サリーは、このことをみんなに知らせたくて、海岸でハマグリを採っているおとうさんのところへ急ぎます。ところが、おとうさんとハマグリを採っているうちにいつのまにか、大切な歯がおちてしまいます。けんめいに探すのですが、みつかりません。

 「サリーは、じぶんの歯がおちているみずたまりへ、もう一度目をやって、それからおとうさんといっしょに歩きだしました。サリーは自分が泣きそうな顔をしていると困るので、おとうさんに見られないように、下をむいてゆっくり歩いていきました。」と、サリーのがっかりしたようすが、ほほえましく、描かれています。

 おなじみ、ロバート・マックロスキーのこの絵本はかなり長い間、品切れになっていました。マックロスキーの絵本には、「すばらしいとき」(品切れ)や「沖釣り漁師のバート・ダウじいさん」などの色つきの絵本のほかに「サリーのこけももつみ」「かもさんおとおり」「ハーモニカのめいじんレンティル」と、この「海べのあさ」などの、モノクロのものがあります。
■ 三男坊の愛読書 ■
 わがやの三男坊が、6歳ぐらいのとき何度もこの絵本を、読んでくれといったことがあります。ちょうどサリーとおなじで歯がぬけかわるころでした。ある日とつぜん、歯がぐらぐらと動きだすという衝撃的な事件は、子どもにとって忘れられないことのようです。そしてそのことが、大人への第一歩ということは、大きくなりたいと思っている子どもにとってとてもうれしいできごとなのでしょう。この「海べのあさ」のもうひとつの魅力はサリーをとりまくさわやかな自然と、あたたかい人間関係が、モノクロの絵でみごとに描かれていることです。三男が魅せられた理由はそこにもあったと思います。 

 季節もちょうど、初夏のころ(?)。おとうさんとボートで朝のかいだしにでかけ、ぬけた歯にお願いするつもりだったアイスクリームにも無事ありつけます。おなかをへらして家に帰りつくころには、おかあさんのおいしい、ハマグリのスープがまっているという、なんともうらやましい結末ではありませんか。

 おいたざかりの弟のジェインや、なんでもやのコンドンさんなどの脇役の存在感。まさに、マックロスキーならではの絵本です。ぜひ、この機会にご一読ください。
執筆 小宮楠緒