思い出す子ども時代の出来事 やかまし村の子どもたちシリーズ
やかまし村の子どもたち
やかまし村の春・夏・秋・冬
やかまし村いつもにぎやか

リンドグレーン/作 大塚勇三/訳
岩波書店 各¥1900
ISBN4-00-115064-6/65-4/66-2
読物=小学校中学年から
 20年前、3人の子どもを抱えて本屋を始めたとき、ことあるごとに、手弁当で手伝ってくれた親友のひとりにSさんがいました。そのお子さんのAちゃんが、引越し先の秋田から訪ねてきてくれました。色々と思い出話をした後、「ところで、どんな本が好きだった?」と尋ねたところ、即座に「リンドグレーンの本!!」。「どの作品が好きだったの?」「リンドグレーンのはみんな好きだった!!」
■ 個性あるシリーズ ■
 スウェーデンの女性作家アストリッド・リンドグレーンの作品には、よく知られている「長くつ下のピッピ」シリーズをはじめ、「名探偵カッレくん」「カールソン」シリーズほか、絵本を含め、翻訳されたものだけでも30冊を超える多くの作品があります。Aちゃんが言うように、その中から一つ選べといわれても、子どもたちは困ってしまうはずです。それぞれ個性があって本当にどれも面白いのですから。いろいろ迷ったあげく、今回は「やかまし村」のシリーズを取り上げました。
■ リーサが見た世界 ■
 やかまし村には北屋敷、中屋敷、南屋敷の3軒の家があります。それぞれの両親と7歳から9歳まで男女6人(お話の途中で1人女の子が生まれて7人になりますが)、それにおじいさんがひとりいます。2人の兄を持つ7歳の女の子リーサの目から見たこのお話は、無理なく、自然に、それでいて飽きることのない出来事に満ちた子どもたちの世界が、見事に描かれています。そして、誰もが一度は経験した子どもの頃のことを思い出すはずです。

 幼い頃、ままごと遊びをしている私たちのセリフを、町からやってきた従兄が陰で盗み聞きし、小ばかにした時があります。ひどく傷ついて「こんちくしょう」と思ったくせに、心の中で、いつかはこの従兄と結婚したい、と思っていたことなどが懐かしく思い出されました。リーサが、なかなか思うようにならない隣のオッレと結婚しようと決めていたように。
■ にぎやかな登下校 ■
 やかまし村ならぬ、ここ熊本県阿蘇郡西原村の通称袴野地区は、三十数戸の小さい集落です。十数人の子どもたちがいて、登下校の時間はとてもにぎやかです。やかまし村の子どもたちと同じように、学校帰り、あちこちで道草をしているのをよく見かけます。昨年の話になりますが、その春から小学1年生になったH君は、学校が大好き。迷惑するお父さんを5時半にたたき起こし、6時半にはランドセルを背負って我が家の入り口で、迎えに来る友だちをそわそわと待つのだそうです。

 一方、H君を迎えに行く一級上のY君も、「まだ早い、そんなに早く迎えに行ったら相手が迷惑だから」と毎朝、家族が引き止めるのに苦労をすると聞きました。学校まではかなりの道のりです。それでも雨の日など、親が「車で送ろうか」などど言おうものなら、2人とも「エーッ、イヤー、みんなと歩いて行くー!」。久しぶりに聞いたこんな話に、何とも言えない幸せな気分を味わいました。
執筆 小宮楠緒